吉村泰典 東京岐阜県人会会長の講演会を開催しました(2018年4月28日)

4月28日午後、都道府県会館にて東京岐阜県人会・大垣北高関東同窓会との共催で吉村泰典東京岐阜県人会会長の講演会が開催されました。以下に講演要旨とその模様をお知らせします。

慶應義塾大学医学部名誉教授として日本の生殖医療を率いられ、また少子化対策・子育て支援担当として内閣官房参与を務められた吉村会長らしく、医学に裏付けられた望むべき社会制度を豊富な資料に基づいて説かれる講演は印象に残るものでした。

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講演会 式次第

 講演要旨~『女性が健やかに輝き続ける社会を目指して』

■はじめに~現代社会
20世紀前半に比べ、先進諸国の人々のライフサイクルは大きく変化した。
⾧生きになり、健康年齢も伸びた。また、女性の高学歴化と社会進出が進んだ。
栄養状態も良くなり、子供の成⾧も早くなった。

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講演される吉村泰典会長

 

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最前列の古川多治見市長を含め50名を超える参加者

 

■生物としての人間
しかし地球で 40億年かけて進化してきた生物としての人間の身体は、時としてこの変化に対応できない場合がある。
たとえば女性の卵子。一人の女性の一生涯分の卵子はお母さんのおなかの中にいる時点で全数出来上がってしまっていて、年齢が高くなるのに比例して、排卵される卵子は“クオリティーのわるい”ものになっている。
また女性の生理についても、20世紀前半まで女性は生涯に数人の子供を出産するのが一般的だった。 20世紀前半、我が国を含めた先進国の平均寿命は60歳くらい。当時、女性の平均初潮年齢は今より1~2年遅かったが、閉経の年齢はほとんど変化していない。
女性の妊娠可能期間は今より少し短いが、初産が早く生涯に4~5人の子供を妊娠・出産していたため、当時の 女性が生涯に経験する月経の回数は現代女性より大幅に少なかった。 このサイクルは生物としての人類が誕生してから変わらぬものだったはずである。
一方、現在のわが国の女性は、初産が遅くなり生涯に産む子供の数も1~2人が一般的。つまり、現代の女性は生涯に経験する月経の回数が飛躍的に増えた、ということを認識頂きたい。
初産が遅れ数多くの月経にさらされている結果、子宮内膜症などの病気を引き起こしているとも言える。それ以外にも月経に伴う様々な弊害がある。
妊娠・出産すれば月経にさらされる機会が減少し、子宮内膜症などの防止にともいえるが、病気の予防のために今の女性のライフスタイルを変えることは本末転倒。

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豊富なデータを駆使した実証的なご説明

■医療制度を考える者として
社会の進化により女性のライフスタイルが変わった以上、それに適合できるよう医療を提供し、制度を考えるのが公衆衛生を考える者の役目。
その意味で、oc(経口避妊薬)を日常的に服用できるようにするのが現時点では最善策と考えられ、欧米諸国では一般化しつつある。
月経は妊娠できなかった時におこる生理現象であり、子宮内膜症などの発症以外にも生理痛等々、女性が社会で活動する際の支障を引き起こしている。
ocの服用により月経が無くなれば、これらの現象からは即座に解放されると同時に子宮内膜症等の罹患の不安からも解放される。
一方で妊娠を望んだ際にはoc の服用を停止すれば、次の周期で排卵が再開するので、逆の意味での不安もない。
そして欧米諸国での臨床結果では、目立った副作用もない。
わが国ではマスコミが永らく”経口避妊薬”という名前と共に後ろめたい印象の報道を続けて来たため、ネガティブな印象が染み付いてしまっている。これは子宮頸がんワクチンの報道の際も同じ。
ごく少数の副作用被害を大々的に取り上げ、子宮頸がんワクチン接種を徹底的に断罪した結果、今では接種率が1%にまで下がっている。
子宮頸がんワクチンの効果は今や世界中で認められていて、先進国はおろか、最近世界の注目を集めている東アジアの某国ですら接種が一般化しているのだが、わが国が例外となってしまった。その結果、毎年 3,000 人の女性が子宮頸がんで亡くなっている。
oc の場合も、話を持ち出すとマスコミは条件反射的に”経口避妊薬”と騒ぎ立て、服用する女性達を罪人のように報道する。
少子化を騒ぎたてながら、一方で効果的な対策に対しては科学的根拠もないまま報道を続け、結果的に女性の社会進出と健康を阻害している我が国のマスコミの姿勢も問題がある。

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■むすび

今の日本社会のかたちに合った医療を考える時の基本姿勢は、紀元前100年頃に編纂された中国の医学書・黄帝内経素問(こうていだいけいそもん)に書かれている“未病“、『すでに病みたるを治せず、未だ病まざるを治す』。発病する前に未然に防いでしまうことである。
■西濃会からのコメント
講演会には東京に出張されていた古川雅典多治見市⾧も参加され、行政として対策できること等について熱心に質問されていました。

古川雅典多治見市長

講演会に引き続き行われた懇親会で挨拶される古川雅典多治見市長

我が国が直面する課題として少子高齢化が叫ばれてから十数年。
少子化対策として各自治体や企業から『子育て支援』という言葉を聞くことは日常的になりました。
しかし、そこから更に一歩進んで、女性がより活躍しながら出産・育児できる社会にするために、やらなければならない事はまだまだ沢山あると言えます。
子宮頸がんワクチンについては、世界的な学術誌「ネイチャー」の姉妹誌「サイエンティフィック・リポーツ」の2016年11月11日号に掲載された子宮頸がんワクチンの副作用に関する東京医大教授の論文が、不適切な実験方法が明らかになったとの理由で掲載撤回された、と5月11日に各社で報道されましたね(→朝日新聞デジタルの見出し)

最近も『女性は必ず3人以上の子供を産むように』と発言した国会議員がいましたが、吉村会⾧のご趣旨がもっと広く日本社会に拡がると良いですね。

むすびで紹介された未病についても、昨今は様々な医療ドラマが高視聴率ですが、生活者である我々は吉村会⾧がおっしゃられているように、ドラマになるような大手術を受けないで済めばそれに越したことは無いと思います。