第五期定期総会懇親会で大垣市出身の作家・中村航さんのトークショーを開催しました

2018年11月9日、ビヤホールライオン 銀座七丁目店 6階『銀座クラシックホール』にて開催された東京岐阜県西濃会第五期総会に引き続き、作家・中村航さんのトークショーを開催させて頂きました。

講演はインタビュー形式で
84年の歴史を感じさせる会場で

大垣市林町、大垣北高校ご出身の中村航さんは、芥川賞の候補にたびたびノミネートされ、2002年にデビュー作「リレキショ」で第39回文藝賞を受賞、2004年には「ぐるぐる回るすべり台」で第26回野間文芸新人賞を受賞。最近では、昨年土屋太鳳さん主演で公開された映画「トリガール!」や人気アニメ・スマホゲーム「BanG Dream!(バンドリ!)」の原作を手掛けられ、故郷・大垣市がプロデュースして2018年に製作したアニメ「おあむ物語 その夏、わたしが知ったこと」と「いつか会えるキミに」の原作・脚本も手がけられるなど、多方面で大活躍されています。

会場に並べられた中村航さんの著作の数々
会場に並べられた中村航さんの著作の数々

トークショーは用意された質問に対して中村航さんにお答え頂くQ&A形式で行わせて頂きました。集まったのは同郷の方達、インタビュアーは高校の後輩というシチュエーションで、中村さんからは懐かしいお話を沢山頂戴しました。主な質問と回答を以下にご紹介します。

Q 岐阜県の西濃地方の大垣市で幼少期を過ごされた中村さんですが、どんな少年でしたか。
A 大垣北小学校の皆と外で遊びました。今はほとんどなくなってしまいましたが、北小校下には大きな紡績工場がいくつもあり、子どもながらに、夕方になるとたくさんの人が出てくる不思議な所だと思っていました。ある大きな工場の裏口に、小さな箱があり、その箱のボタンを押すと扉が開いて中に入れることを知り、友達と中に入ったことがあります。敷地内の売店では、市販品が安く売られていたりして、なんて良いところだと思ったことが印象に残っています。
Q 物語や小説はそのころからお好きだったのですか。
A 小学校の頃、早く来すぎた活字中毒で、市立図書館の本を頻繁に借りに行っていました。その図書館は、『100回泣くこと』のモデルになっており、実際に、小説同様私と友人が捨てられた子犬を見つけ、友人が連れて帰りました。中学では夏休みの作品として、毎年小説を書きました。その頃は歴史小説を書いていました。高校では理系に進んだこともあり、あまり小説には触れませんでした。大人になり、打ち込んでいたバンド活動を辞めた次の日から、何に打ち込もうかなと考え、また小説をたくさん読みだしました。
Q 小説をお書きになり、特に印象に残っている作品はありますか。
A はじまりの3部作『リレキショ』、『夏休み』、『ぐるぐる回るすべり台』は小説家として世に出るキッカケになったので思い出に残っていますし、『100回泣くこと』は死を扱った作品なので、感情も入り書くのにとてもエネルギーを使いました。などなど、どの作品にも思い入れがありますね。

質問に答える中村航さん
とても沢山の思い出をご披露して頂きました

Q 作品の中に登場するキャラクターは、実在のモデルなどいらっしゃるのでしょうか。
A 実際にこの人という人がいるというよりは、自分の感情を一人のキャラクターに仕上げていくと言う方がしっくりきますね。
Q 映画化された作品が3作もありますね。どのような経緯でお話が来るのですか。
A 作品を読んだ脚本家さんなど、映画を撮りたいと思う人や会社からオファーがあり、優先契約のようなものを結びます。例えば、1年間の契約で○円、その期間内に映画化されなければ、別の方と契約しても良いというような感じで、幾つもの会社が一度に映画化しないような仕組みになっています。
Q 映画化されるにあたり、原作者の方には物語の世界観などを壊さないように、質問など来るのですか。また、原作者の方は作品に注文をつけることができますか。
A そうですね、原作者にはいろんな段階で確認がきます。映画化される時に幾つも注文をつける原作者もいるようですが、私は3作品通して1回だけお願いしたことがあるくらいで、基本的には口は出さないですね。
Q 今年は大垣市の市政100周年記念アニメーション、『おあむ物語』、『』の原作も手掛けられましたね。
A ご縁あって今回のアニメーションの制作会社の方と知り合い、コンペを一緒にやらないかと誘っていただいたので、実現した作品です。皆さんは元々の『おあむ物語』をご存じでしたか。『おあむ物語』は、関ヶ原の戦いの際に大垣城で戦っていた石田光成の家臣が、一家でいかに過ごしていたか、そこからどう逃げたのか等をおばあさんになったおあむさんが昔話を聞かせるように語っていくお話です。武将の話は色々残っていますが、その家族が戦いの成果を良くみせるために、取った相手方の首を並べてお歯黒を塗ったり、鉄砲の弾を作ったり、大垣城から逃げる際には身重の母が産気づいて出産したりと、武将の周囲の人の目線で書かれた物語です。これは当時の生活を知ることができる、非常に興味深い作品だと思いました。
Q アニメの原作以外でも、大垣で一般市民向けに小説講座を持たれていて、とても社会貢献活動に熱心に取り組んでいらっしゃるとお伺いしました。
A はい、この講座では、20人の方と一緒に実際に大垣市内をまわって題材を集めたりして、小説の書き方を学んでもらっています。本当はもっと多くの方に参加してもらっても良いのですが、一人で確認できるのはこの人数が精一杯ですね。このような取り組みは他で実施していないと思いますし、とても面白いと思っています。これから講座の集大成で、できた作品を見せてもらうことになっていますが、とても楽しみです。

おあむ物語の説明の最中に大垣市特製『おあむ茶』のペットボトルが登場して
おあむ物語の説明の最中に大垣市特製『おあむ茶』のペットボトルが登場して

Q 今後、どのような作品を作りたいとか、テーマにしたいと考えていらっしゃることはありますか。

A 西濃地方を題材にした作品をいつか作りたいと思っています。
私たちも西濃を感じられる作品、読んでみたいです。楽しみにしています。本日はありがとうございました。

中村航さんを囲んで
中村航さんを囲んで

上記にご紹介した以外にも、中村航さんや浅井リョウさんなど西濃地方ご出身の新進気鋭の作家が何人もご活躍されている状況を『ものがたり生まれ出づる処、西濃』とも表現されていたのが印象に残っています。

中村航さんにはトークショーに引き続き行われた懇親会にも快くお付合い頂き、更に沢山のお話を聞かせて頂きました。大変遅くなってしまいましたが改めて御礼申し上げます。